今、コロナウイルスによる世界的な経済機能の停止と大恐慌への観測から、ベーシックインカムの導入に注目が集まっています。
先月、コロナウィルスによる人的、経済的被害が甚大なスペインにおいて、史上初めて「ベーシックインカムが導入される」という情報が世界を駆け巡りました。
スペインは言わずと知れたEU加盟国です。地中海の入口を押さえたイベリア半島のほぼ全域にまたがる広大な国土を持ち、古来より欧州の芸術、文芸、建築に大きな影響を与えてきた国家です。
これまでのような小国や地方自治体の実験的な導入ではなく、欧州の大国が国家規模でBIを導入すると言うのだから、世界が色めき立ったのも無理はありません。
しかしやがてこれが、純粋な純粋なベーシックインカム導入とは言えない事が明らかになります。
後続の発表は、「あくまで低所得者への給付」というものでした。
支給されるのは、最低限の収入すら得られていない、と判定された人達であり、これはいわば多くの国で行われている生活保護等の制度と同じです。
すべての国民に一律で生活費を配布するベーシックインカムとは異なるものです。
これが、そもそもの発信に誤謬があったのか、後で他の勢力から横やりが入り尻すぼみになったのかはわかりません。
しかし、現状のスペインの政治、財政状況を考えれば納得がゆきます。
同国は2012年に経済危機を経験しており、EUの中でも財政赤字の大きい国です。
大航海時代に世界中へ軍隊と宣教師を派遣して富を収奪したこの国家の悪癖は今なお、短期的、投機的な経済感覚と利己主義、貧富の差として社会に引き継がれています。
明るい国民性やサッカーなどの国際舞台での活躍から、スペインは伝統的で華やかな国家と思われがちですが、その実態は大きく違います。
今回のコロナウイルスにより、ベーシックインカムへの流れが加速したことは間違いありません
しかしBIとは、これまで各国が「福祉」と称して膨大な予算を積んできた国民への社会的保証を廃止し、かわりに現金を配布する制度です。
今まで国が行ってきた福祉や社会保証を本当に全廃できるのか。それに国民が納得するのか。あるいは多くの貧困層をもカバーできる基礎保障が今の国家財政でできるのか。
社会的な貧困と格差が残存し、「福祉」や「権利」といった近代観念に侵された欧米の諸大国にとって、BI導入の可能性を理論的には理解できても、実行には大きな壁があるのです。
ベーシックインカムとは、従来の「資本主義」や「福祉絶対」にかわる新たな統合原理と経済基盤を受け入れる精神性や社会的基盤が整っているのかが問われています。
ここに、欧米とは違う日本人の可能性と実現基盤が注目されます。
すばわち共同体性と縄文の精神を宿し、同時に社会的な貧困の消滅、共認原理による集団統合に向かいつつある日本だからこそ、一歩を踏み出すことが出来るのではないでしょうか。