中国政府は、国内のマスコミが、トランプの就任式を実況中継したり、自由に取材して番組や記事を流すことを禁じた。
新華社が作った記事や映像を流すことしか許さなかった。この理由は明白だ。「司令部を砲撃せよ」という毛沢東の文革発動を想起させるトランプの革命的な大統領就任演説が同時通訳つきで中国に実況中継されたら、文革を覚えている中国の紅衛兵世代はピンときてしまう。
中国で習近平の独裁強化を嫌う人々は、毛沢東懐古趣味に仮託して抵抗運動をやってきた。当選前から、トランプの奔放な革命姿勢は、中国人にとって気になる存在だった。
革命したことのない日本人は気づかないが、トランプの就任演説は危険文書だ。習近平に恐怖や敵愾心を感じさせている点でも、毛沢東とトランプは同志だ。
▼毛沢東は中国を壊し、トランプは米国を壊す
毛沢東の文革は、中国を経済的、政治的、社会的に破壊し、後進国にした。トランプの革命も、米国を経済的、政治的(覇権的)、社会的に破壊する可能性がかなりある。
ブッシュとオバマ時代の16年間の米国は、軍産複合体(軍、諜報機関、マスコミ、政界などの連合体)がアルカイダやISISといったイスラムなテロ組織と戦うふりをして実はテロ組織を涵養支援し続け、米国がテロ戦争の名目で恒久的に中東など世界に軍事駐留し、気に入らない政権を武力や政治介入(民主化運動の扇動)で転覆してますますテロを増やし、米国内的にも軍産複合体がテロ戦争の名目で権力を握り続ける軍産独裁の体制を敷いてきた。
トランプ革命の前向きな点は、こうした米国の軍産支配を破壊しようとしていることだ。
だがその際に、米国の政治経済の体制や、米国中心の国際体制(覇権体制)ごと破壊されてしまうことがあり得る。それは、米国と世界の経済危機や政治混乱につながる。
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こうしたトランプの反リベラル姿勢は選挙終了とともに終わると思いきや、大統領就任後も全く変わらず、トランプはむしろ全速力で反リベラル政策を進めている。
マスコミとの対決も続き、トランプはマスコミ迂回ツールであるツイッターでの発信をやめていない。トランプがリベラル敵視を続けるのは、リベラル派が中東民主化(政権転覆)や環境保護(米国内のエネルギー開発を禁止させ、米国が中東などの石油ガスに頼らざるを得ないようにして、米軍の世界支配を正当化する)などの点で、軍産複合体の無意識の傀儡になってしまっているからだろう。
1月27日には、シリア、イラン、イラク、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアという中東イスラム世界の7カ国からの移民難民の米国への渡航を暫定的に禁じる大統領令を出し、米国の空港などが混乱した。米国のリベラル運動家が人権擁護、難民保護の観点からトランプを非難する政治運動を強めている。